蓼科の週末住居


撮影:新建築社写真部

用途 週末住居
場所 長野県茅野市
構造 木造2階建て
規模 建築面積:84.43㎡
延床面積:113.92㎡
敷地面積 1078.00㎡
竣工 1999年8月
設計・監理 野上恵子
構造設計 梅澤建築構造研究所
施工 千広建設
家具 ナカヤマプロダクト

敷地の魅力がそのまま庭になる

この週末住居は、茅野市街から沢づたいに山に入ってゆき最後の集落を抜けたところ、カラマツを中心にマツ、シラカバ、ミズナラなどが点在する林の中にあります。敷地はカーブしながら上ってゆく道路の内側に位置し、一番高いところからアクセスするため、西側下方に大きく視界が開けます。敷地内の樹木をできるだけ切らず、その内側に、周りの自然が一番美しく見えるよう、庭として眺められるよう、建物の位置と形を決めて行きました。

撮影:新建築社写真部

袖壁で額縁を作る

都心に比べゆったりしているとはいえ、開発された別荘地の敷地は300坪、それなりに隣家が気になります。北面と東面は閉鎖性の強い壁とし、適度なプライバシーを確保するため軒先いっぱいに袖壁を伸ばしました。北東2面を構造的に強固にし、対角にあるバルコニー部分の袖壁と2階床面・屋根面の剛性によって西面と南面の開放を可能としました。室内からは、壁を背にして開放的な風景が窓の向こうに切り取られます。

撮影:新建築社写真部

硬い素材と柔らかい素材、枠のないインテリア

周囲に美しい自然があり1年を通して変化に富んでいるので、建物の形はシンプルに、素材は限定し、必要なところにお金をかける以外はコストダウンを試みました。外壁は信州産のカラマツ、屋根は片流れのステンレス鋼鈑。

内部は構造用合板を表しで用い(構造材が表し=内装仕上げがない=安い)、建具や家具にも同材を使っています。木サッシの枠を表し、いわゆる窓枠がありません。巾木もなく目地を設けて麻縄を埋め込みました。
1階から2階まで一室空間で浴室以外間仕切り扉がありません。外皮の断熱気密性能をあげることで薪ストーブと床暖房だけで全体を温めることが可能です。

撮影:新建築社写真部

硬い印象の1階に対して、2階は畳と韓国紙張り障子の柔らかいインテリア。寝室を想定していますが、ヨガなどをやっても気持ち良い空間です。

家具づくり

構造用合板を面材とした特注キッチンは、ナカヤマプロダクトさんの工房に通って製作を手伝わせてもらいました。コストダウンと称して色々と学習させていただきました。そのほか、二つを繋げるとベッドになる畳座椅子もデザインしましたが、こちらは全て製作してもらいました。ダイニングテーブルは天板を購入して脚だけつけてもらい、オイル塗装は自分たちで行いました。セルフビルドの幅はどんどん広げて行きたいです。