リストランテ フィオレンツァ

用途 店舗
場所 東京都京橋
構造 内装
規模 床面積:87㎡
竣工 2007年8月
施工 長野マーケティング

イタリアから帰国し、設計事務所として独立してはじめて頂いた思い出深いプロジェクト。大学の助手をしていた頃、まだ本郷界隈にレストランが少なかった時代に通っていたイタリアンレストランのシェフが、わたしがイタリアに行ったことを覚えていてくださり、新店舗のお話に。
本郷店(現在「ココゴローゾ」として営業中)とは違った、少しお洒落して美味しいものを楽しむ、店名(フィレンツェの古い呼び名)の通り、中部イタリアの伝統的料理がベースのリストランテです。


イタリアの雰囲気がわかる、ということを期待され仕事を仰せつかったのでした。輸入の内装材を使ったり田舎家風に天井に古い梁を見せるような方法もありますが、何か違うテーマが必要だと感じ、わたしが暮らしていたローマにあったトスカナ料理のお店の雰囲気、北イタリアのエレガントなティールームのイメージを再現することにしました。壁パネルの淡い着彩、緻密な枠飾り、シャンデリア、要所にあしらわれるノーチェ(クルミ)材。それらを日本で手にはいるシンプルな材料で作ることをテーマとしました。


西洋のインテリアのポイントは「縁取り」です。巾木、廻縁、扉や窓の枠に加えて腰壁や扉パネルの内側にも縁取りが巡ります。部材同士の接合部に生じるディテールですが、それらが額縁のようにデザインの重要な要素になります。あくまで自然におとなしく、すべての入隅・出隅に縁取りをとりつけました。日本のモールディング材メーカーの一番小さな(安価な)繰り型を3つえらび、すべてその組み合わせでつくっています。


天井は少しでも高さが感じられるよう、壁の上部から色をきりかえ、コーナーは曲面に。壁と枠はクリーム色の濃淡。木パネルにする予算はないので石膏ボードに繰り型を張り付けて塗装。クルミ材は濃い色なので、床は固い南洋材のアイアンウッド(北欧製のフローリング)、ワインセラーとカウンターはタモの突き板材を染色して代用。ソファとチェアはモスグリーンとクリームイエローの合成皮革張りです。縁取りを含め各部分の寸法を丁寧に検討することで、フェイクであってもきちんとした佇まいを感じさせるしつらえを目指しました。


シャンデリアは、イギリス製(イギリス人は古いものを好むので優れたレプリカ器具がたくさんあるようです)の器具を扱うコンコルディア照明さんで、麦のモチーフのランプを選びました。この照明のおかげで、やわらかくリッチな雰囲気を出すことができました。ワイングラスを収納する家具は、繊細なマホガニーのアンティークのサイドボードを購入。造作で作るよりもリーズナブルです。美しいものたちをたくさん設えることができた幸せなプロジェクトでした。

■ レストランウェブサイト : https://www.carpediem1995.com/fiorenza/